妥当な三段論法を導くための6つのルール・誤りについて解説

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、妥当な三段論法を導くための6つのルール、誤りのパターンを紹介します。これは三段論法そのものの理解にもつながるでしょう。

 

妥当な三段論法は15種類

まず前提知識を確認しておきましょう。

そもそも三段論法とは、2つの前提から1つの結論を導くような推論でした。

特に今回考察の対象としているのは、カテゴリー的三段論法です。前提と結論がカテゴリー的命題からなるもので、登場する主語述語の種類(項)が3つのものを指しています。

三段論法は、カテゴリー的命題のタイプ:叙法(A,E,I,O)と中間項の順序:格により特徴づけられます。

Sを主語、Pを述語とする。

全称肯定命題、A命題:すべてのSはPである。

全称否定命題、E命題:すべてのSはPでない。

特称肯定命題、I命題:あるSはPである。

特称否定命題、O命題:あるSはPでない。

AEE-2といったように、叙法と格を合わせたものを三段論法の形式と呼ぶのでした。叙法は\(4^3=64\)種、格が\(4\)種あるので、三段論法は\(64\times 4=256\)通りあります。

しかしその中で、正しい前提から正しい結論を導くような推論、すなわち妥当な三段論法は、次の15種類であることが知られています。(19種、24種とする流儀もある)

AAA-1(Barbara), EAE-1(Calarent), AII-1(Darii), EIO-1(Ferio)

AEE-2(Camestres), EAE-2(Cesare), AOO-2(Baroko), EIO-2(Festino)

AII-3(Datisi), IAI-3(Disamis), EIO-3(Ferison), OAO-3(Bokardo)

AEE-4(Camenes), IAI-4(Dimaris), EIO-4(Fresison)

今回は、妥当な三段論法を導出するための基準、三段論法の6つのルールを紹介していきます。

 

妥当な三段論法を導く6つのルール、誤り

まず、妥当な三段論法を導くための6つのルールすべてを提示し、その後で個別に見ていきましょう。

ルール1:三段論法はちょうど3つの項を持たなければならない

ルール2:中間項は少なくともひとつの前提において分配されていなければならない。

ルール3:結論のいずれかの項が分配されているならば、その項は前提においても分配されていなければならない。

ルール4:前提が2つとも否定的な三段論法は、妥当ではない。

ルール5:前提の一方が否定的ならば、結論もまた否定的でなければならない。

ルール6:前提2つが全称命題で、結論が特称命題の場合は妥当ではない。

「妥当な三段論法を導く」とは言っていますが、何が妥当でない三段論法なのかを指定するルールです。256種の可能な三段論法に対し、これらのルールに照らし合わせて妥当でないものを弾いていきます。

 

ルール1:3項のみが妥当

ルール1:三段論法はちょうど3つの項を持たなければならない

これはカテゴリー的三段論法とは何かという定義に含まれているルールですね。

例えば

大前提:PはMである。

小前提:NはSでない。

結論:SはPである。

という形式、4項の三段論法を考えると、MとNの関連性がなければ、結論を導きようがありません。

このような誤りを4項の誤り(fallacy of four terms)と呼びます。5項、6項であっても同様ですね。

 

ルール2:中間項の分配

ルール2:中間項は少なくともひとつの前提において分配されていなければならない。

ルール2、3に共通して登場するのが、項を分配する(distribute)という考え方です。

ある命題においてその項が分配されるとは、その項に対応するクラスの要素がすべて命題によって言及されていることです。

A命題、「すべてのSはPである」:Sが分配されていて、Pは分配されていません。

E命題、「すべてのSはPでない」:SもPも分配されています。

I命題、「あるSはPである」:SもPも分配されていません。

O命題、「あるSはPでない」:Pが分配されていて、Sは分配されていません。

その命題が、どのクラスのすべての要素に言及しているかに注目しましょう。「すべてのSは」という全称命題は主語Sを分配し、「Pでない」という否定命題は述語Pを分配しています。

 

さてその上で、中間項はいずれか1つの前提で分配されていなければならないというルールです。

逆に、両方の前提で中間項が分配されていないような命題を考えてみると

大前提:すべての農家は早起きである。

小前提:すべての勤勉な人は早起きである。

結論:すべての勤勉な人は農家である。

これは妥当な推論ではありませんね。

中間項は「早起きである人」ですが、分配されていません。大前提と小前提において「早起きである」という共通の特徴はありますが(ルール1は守られている)、それらの間に関係性がありません。

このような誤りを、中間項非分配の誤り(fallacy of undistributed middle)と言います。

もし前提を「すべての早起きな人は勤勉である」という形にすれば、「すべての農家は勤勉である」という結論が導ける妥当な三段論法となります。

 

叙法をAAAに限定して言えば、AAA-2は中間項が分配されていないので、妥当ではありません。

また、前提2つが特称命題であるパターンも妥当ではないと言えます。なぜなら、特称命題の項は分配されず、したがって中間項も分配されないのですから。よって、叙法の最初2つがIかOであるような三段論法、IOA、OIE、などは妥当ではありません。

つまりルール2は、前提のいずれか1つは全称命題でなければならないとも要請しているわけですね。

 

ルール3:結論の分配項は前提でも分配

ルール3:結論のいずれかの項が分配されているならば、その項は前提においても分配されていなければならない。

結論であるクラスのすべての要素に言及しているならば、いずれかの前提でそのクラスのすべての要素に言及していなければならない。それはそうですよね。

 

大前提:すべての犬は哺乳類である。

小前提:すべての猫は犬ではない。

結論:すべての猫は哺乳類ではない。

結論の哺乳類という項は分配されていますが、それはどちらの前提でも分配されていません。哺乳類全体に当てはまる前提を持たないまま、「~は哺乳類ではない」とは言えませんよね。

このような誤りを、不良過程の誤り(fallacy of illicit process)と呼びます。特に、分配されている項が大項ならばillicit major、小項ならばillicit minorと呼ばれます。今回の例ならば、哺乳類は大項なので、illicit majorですね。

 

今回の例は、AEE-1が妥当でないと言っています。ルール3によれば、AEE-3も妥当ではありませんね。なぜなら、結論がEである以上は大項が分配されているべきなのに、第3格では前提で分配されていないからです。(AEE-2、AEE-4は妥当です)。

また、ルール2でAAA-2は妥当でないという話をしました。ルール3を使えば、AAA-3とAAA-4が妥当でないと言えます。なぜなら、結論はAなので小項が分配されているべきですが、第3、4格だと小前提において分配されるのは中間項だけになるからです。よって、AAA-1のみが妥当と言えます。

ルール3は、結論の分配している項に関するルールです。なので、結論がA、E、Oのときのみ考慮に入れ、結論がIのときは考慮に入れる必要がありません。

 

ルール4:否定のみの前提は妥当でない

ルール4:前提が2つとも否定的な三段論法は、妥当ではない。

例えば、

大前提:すべての動物は植物ではない。

小前提:ある植物は地面に生息しない。

結論:地面に生息しないものは、動物ではない。

これは妥当な推論ではありません。中間項「植物」に注目すると、大前提は動物は植物の外側にあることを述べ、小前提は植物の内側一部分の性質を述べています。これでは共通点がなく、結論を導きようがありません。

このような誤りを、排他的な前提の誤り(fallacy of exclusive premises)と言います。

ルール4によれば、EOEやOEAなど、叙法の最初2つがEまたはOの三段論法は妥当ではありません。

 

ルール5:前提の一方が否定ならば、結論は否定

ルール5:前提の一方が否定的ならば、結論もまた否定的でなければならない。

ルール5は、結論が肯定ならば、前提2つは肯定でなければならない、とも言いかえられます。

例えば

すべての田舎に住む人は車に乗る。

ある芸能人は田舎に住んでいない。

よって、ある芸能人は車に乗る。

これは妥当ではありません。結論が肯定的だと、SはPに部分的にもしくは全体的に含まれます。しかし、否定的な前提からは、「含まれない」関係は導けても、「含まれる」関係は導けません。小前提によれば、ある芸能人は田舎に住んでいる人のクラスに含まれまれていないわけですが、それでは大前提を利用して何かを言うことができません。

このような誤りを、否定的な前提から肯定的な結論を導こうとする誤り(fallacy of drawing an affirmative conclusion from a negative premise)と言います。

 

ルール5によれば、前提にEまたはOが含まれるならば、結論もEまたはOでなければ妥当ではありません。つまり、OIAやEAIのようなパターンは、すぐさま妥当でないとわかります。

 

ルール6:全称のみから特称は導けない

ルール6:前提2つが全称命題で、結論が特称命題の場合は妥当ではない。

これは前提2つが全称命題である妥当な三段論法は、結論も全称命題となるとも言い換えられますね。

このルールは、「すべてのAはBである」から「あるAはBである」が導けるとする立場(アリストテレス的解釈)か、導けないとする立場(ブール的解釈)かによって、採用されるかどうか変わります。

今回は後者の立場、「すべてのAがBである」という命題は、Aに関する一般的な性質を述べるにとどまり、Aの存在については何も述べていないという立場に立ち、ルール6を採用して考えましょう。

アリストテレス的な立場では、全称命題が存在命題を暗に導くとされていました。これは存在含意(existential import)と呼ばれるものです。ブール的な立場では、全称命題は存在含意を持たないとして考えます。

 

例を挙げましょう。

大前提:すべての小さい子どもは人見知りだ。

小前提:すべての龍は人見知りではない。

結論:小さい子供ではない龍が存在する。

あえて結論を「存在する」という言い方にしました。たとえ一般的な龍の性質がわかっていたとしても、そこから龍の存在を導くのは妥当ではありません。

このような誤りを、存在的な誤り(exitstential fallacy)と言います。

古典的、アリストテレス的な解釈では、この場合も弱形式(weak form)と呼ばれ、妥当とされていました。

 

ルール6によると、AAIやIAOのような叙法の三段論法は、妥当ではありませんね。前提2つが全称命題ならば、結論も全称命題でなければならないので。

 

まとめ

ルール1:三段論法はちょうど3つの項を持たなければならない

ルール2:中間項は少なくともひとつの前提において分配されていなければならない。

ルール3:結論のいずれかの項が分配されているならば、その項は前提においても分配されていなければならない。

ルール4:前提が2つとも否定的な三段論法は、妥当ではない。

ルール5:前提の一方が否定的ならば、結論もまた否定的でなければならない。

ルール6:前提2つが全称命題で、結論が特称命題の場合は妥当ではない。

以上、妥当な三段論法を導くための6つのルールを紹介してきました。

ルール1は三段論法を考えるのときの当たり前のルールです。

ルール4、5、6を使うと、叙法の大半の種類が妥当ではないことがわかり、妥当な可能性のある三段論法を絞り込めます。

そこからさらにルール2、3を当てはめれば、どのような格が妥当なのかが判明するわけです。

今回、妥当な三段論法15種すべてを導出したわけではありませんが、どのように妥当性を判別すればいいか、その方針はわかっていただけたのではないでしょうか。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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参考文献

Copi, Cohen, McMahon
 “Introduction to Logic”

 

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