三段論法の分類:叙法(A,E,I,O)と格、形式、妥当な15種とは

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、カテゴリー的三段論法の叙法と格、形式という概念を紹介し、それによって三段論法を分類してみます。

前提知識:カテゴリー的三段論法とは:具体例と標準形、三段論法的推論

 

叙法とは

叙法について話す前に、カテゴリー的命題の標準形を確認しておきましょう。

Sを主語、Pを述語とする。

全称肯定命題、A命題:すべてのSはPである。

全称否定命題、E命題:すべてのSはPでない。

特称肯定命題、I命題:あるSはPである。

特称否定命題、O命題:あるSはPでない。

標準形は、このように4種類に分類されるのでした。これを略記するために、それぞれの命題をA命題、E命題、I命題、O命題と呼ぶことにします。

A命題とI命題は肯定命題でラテン語の肯定affirno、E命題とO命題はラテン語の否定negoから取ったものです。A,E,I,Oという文字を見たときに、「全称?特称?」「肯定?否定?」が見抜けるようになっておきましょう。

その上で、この記号を使えば(標準形のカテゴリー的命題の)三段論法を次のように整理できます。例えば、

すべての哺乳類は恒温動物である。

恒温動物であるトカゲはいない。

したがって、すべてのトカゲは哺乳類ではない。

これは全称肯定、全称否定、全称否定の順です。つまり、AEEです。この文字列を三段論法の叙法(mood)と言います。叙法というと難しく聞こえますが、言い表し方のことです。

ある兵士は臆病である。

臆病なヒーローはいない。

よって、ある兵士はヒーローではない。

上の三段論法の叙法は、EIOです。叙法を考えるときは、標準形の順序(大前提、小前提、結論)の順で書いていることに注意しましょう。

三段論法における叙法の種類は、A,E,I,Oの4文字から重複を許して3文字を順に並べるときの並べ方であり、\(4^3 = 64\)通りありますね。

 

格、形式とは

三段論法は、叙法だけでは決定できません。同じ叙法であっても、一方が妥当なのに、もう一方が妥当でないケースもあるのです。これを区別するのが格という概念です。

例を挙げましょう。

A:すべての哺乳類は恒温動物である。

E:すべてのトカゲは恒温動物ではない。

E:したがって、すべてのトカゲは哺乳類ではない。

A:すべての犬は哺乳類である。

E:すべての猫は、犬ではない。

E:したがって、すべての猫は哺乳類ではない。

どちらの叙法もAEEですが、上は妥当で、下は妥当ではありません。

下の三段論法では、前提が正しいとしても、猫に関しては「犬ではない」以上に何も言えません。結論では「哺乳類のクラスの要素はすべて猫ではない」と言いたいのに、2つの前提において哺乳類のクラスすべてに当てはまる言及がないからです。これは不当な過程の誤謬 fallacy of illicit processと呼ばれる誤りです(特にこのケースでは、大項に関する誤りなので、illicit major と呼ばれます)。

AEEという同一の叙法であっても、妥当でないものと妥当でないものを区別したい。そこでその違いである、前提にしか登場しない項、中間項の並び順、すなわち(figure)に注目します。

三段論法における小項をS、大項をP、中間項をMとする。

第一格:大前提はM-P、小前提はS-M

第二格:大前提はP-M、小前提はS-M

第三格:大前提はM-P、小前提はM-S

第四格:大前提はP-M、小前提はM-S

と約束しましょう。大前提、小前提を縦に並べたときに、中間項の位置が「\、|(右)、|(左)、/」と並んでいるのが、それぞれ第一~第四格です。

上の2つの三段論法ならば、「P-M、S-M」で第二格、「M-P、S-M」で第一格です。

叙法と格を合わせて、三段論法の形式(form)と呼びます。

AEE-2の形式は妥当で、AEE-1の形式は妥当ではない、というわけです。

 

叙法と格:形式による三段論法の分類

三段論法の形式は、叙法が\(64\)種、格が\(4\)種なので、その組み合わせは\(64\times 4=256\)通りあります。

しかしながら、「不当な過程の誤謬」など妥当でない三段論法を決める6つのルールを決めて絞り込むことで、妥当な三段論法はたったの15種となることが知られています。(参考:『Introduction to Logic』)

AAA-1(Barbara), EAE-1(Calarent), AII-1(Darii), EIO-1(Ferio)

AEE-2(Camestres), EAE-2(Cesare), AOO-2(Baroko), EIO-2(Festino)

AII-3(Datisi), IAI-3(Disamis), EIO-3(Ferison), OAO-3(Bokardo)

AEE-4(Camenes), IAI-4(Dimaris), EIO-4(Fresison)

かっこ()内についているのは、それぞれの形式についているラテン語の名前です。

 

次のような三段論法を見ると、

臆病なヒーローはいない。

ある兵士は臆病である。

よって、ある兵士はヒーローではない。

その叙法はEIOで、前提は「M-P,S-M」なので第一格、形式はEIO-1ですね。これはFerioと呼ばれる妥当な三段論法です。

 

妥当な三段論法15種をすべて覚える必要はないと思いますが、形式(叙法と格)が定まれば三段論法の妥当性は決まる、という点は覚えておきたいですね。これから三段論法を見かけたら、その叙法と格を判定し、妥当かどうか考えてみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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参考文献

Copi, Cohen, MacMahon
 “Introduction to Logic”

 

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