カテゴリー的三段論法とは:具体例と標準形、三段論法的推論

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

前回、古典論理と、カテゴリー的命題について紹介しました。

今回はそのカテゴリー的命題を使った三段論法、カテゴリー的三段論法の具体例と、その標準形、三段論法的推論を紹介します。

 

カテゴリー的三段論法、具体例

三段論法(syllogism)とは、2つの前提となる命題から1つの結論を導くような演繹的推論です。前提2つ、結論1つで合計3段。

そしてカテゴリー的三段論法(categorical syllogism)とは、カテゴリー的命題を使った三段論法で、ちょうど3種類の項(主語または述語)を持つものです。これを単に三段論法と呼ぶこともあります。

おさらいしておくと、カテゴリー的命題とは、S、Pをクラスとして、「すべてのSはPである」「あるSはPでない」のように、クラス間の関係の述べる命題のことでした。クラスとは、共通の特徴を持ったものの集まりです。

 

具体例を見てみます。

すべての哺乳類は恒温動物である。

恒温動物であるトカゲはいない。

したがって、すべてのトカゲは哺乳類ではない。

哺乳類、恒温動物、トカゲはクラスなので、これらはカテゴリー的命題です。そして、哺乳類、恒温動物、トカゲというちょうど3つの項を持つので、これはカテゴリー的三段論法と言えます。

ここで、結論の主語を小項(minor term)、述語を大項(major term)、前提の2つに含まれていて結論に含まれない項を中間項(middle term)と呼びます。

さらに、小項を含む前提を小前提(minor premise)、大項を含む前提を大前提(major premise)と呼びます。言い換えれば、小前提は結論の主語を含み、大前提は結論の述語を含むものです。

今回の具体例ならば、トカゲが小項、哺乳類が大項、恒温動物が中間項です。なので、「恒温動物であるトカゲはいない。」が小前提、「すべての哺乳類は恒温動物である。」は大前提です。

何が大前提となるかは、三段論法の形によって変わります。日常用語的な感覚に惑わされて、「一般論っぽいことが書かれているから、これは大前提となる命題だ」と考えないように注意しましょう。

 

別の例も試してみましょう。

ある兵士は臆病である。

臆病なヒーローはいない。

よって、ある兵士はヒーローではない。

臆病、ヒーロー、兵士という3つの項が登場するカテゴリー命題たちなので、カテゴリー的三段論法です。

小項は兵士、大項はヒーロー、中間項は臆病です。そのため、小前提は「ある兵士は臆病である。」で、大前提は「臆病なヒーローはいない。」ですね。

(項 term は、名辞または概念と日本語訳されることもあります。例えば、大名辞や小概念と言ったように。項という用語は比較的馴染みやすいと思うので、今回はそれを採用しました。)

 

カテゴリー的三段論法の標準形

カテゴリー的三段論法を分類し、その妥当性を調べるために、その標準的な形を取り決めておきましょう。

カテゴリー的三段論法が標準形(standard form)であるとは、

  1. 前提と結論がすべて標準形のカテゴリー的命題である
  2. 命題が標準形の順序(大前提、小前提、結論)で並んでいる

ことです。

2番目の条件に関して、上で述べた「ある兵士はヒーローでない」は順序が異なりました。並び順が違うと分析にしにくいので、あらかじめ大前提、小前提、結論の順で並んでいる三段論法を考えたいわけです。

1番目の条件、標準形のカテゴリー的命題について紹介しましょう。

 

カテゴリー的命題の標準形

カテゴリー的命題が標準形(standard form)であるとは、次の4つのいずれかの形をしていることです。

Sを主語、Pを述語とする。

全称肯定命題(universal affirmative proposition)、A命題:すべてのSはPである。

全称否定命題(universal negative proposition)、E命題:すべてのSはPでない。

特称肯定命題(particular affirmative proposition)、I命題:あるSはPである。

特称否定命題(particular negative proposition)、O命題:あるSはPでない。

つまり、標準形のカテゴリー命題は、「すべての~」か「ある~」を含んだ肯定命題または否定命題です。「ある~」は「~が存在する」とも言いかえられ、「少なくとも1つ以上」を意味します。

標準形は、「全称または特称」×「肯定または否定」の組み合わせなので、合計4種類あります。

個別の命題がどのパターンに当てはまるのか、上の三段論法で登場したカテゴリー命題を分類してみましょう。

全称肯定命題:すべての哺乳類は恒温動物である。

全称否定命題:恒温動物であるトカゲはいない。すべてのトカゲは哺乳類ではない。臆病なヒーローはいない。

特称肯定命題:ある兵士は臆病である。

特称否定命題:ある兵士はヒーローではない。

と整理できて、どれもが標準形のカテゴリー命題であることがわかります。

以上によって、標準形の三段論法とは何か、ということがわかったでしょうか。

 

三段論法的推論

僕たちが普段使っている推論は、三段論法の形をしていないけれども、三段論法的な考え方をしていることが多いです。

そこで、意味の変更なしに標準形のカテゴリー的三段論法に変形できるような推論を、三段論法的推論(syllogistic argument)と呼ぶことにしましょう。

 

例えば次の推論を考えます。

すべての便利なものは2mを超えない。なぜなら、保管できないものは不便なもので、2m以上で保管しやすいものはないからだ。

これを三段論法の形に直してみましょう。文章を3つの命題に分け、結論に注目し、それらしい順番に並べ替えます。

前提:2m以上で保管しやすいものはない。

前提:保管しにくいものは不便なものだ。

結論:すべての便利なものは2mを超えない。

これらはカテゴリー的命題ですが、標準形でないので、標準形であるように書き直します。

前提:すべての2m以上のものは、保管しやすくない。

前提:すべての保管しにくいものは、不便なものだ。

結論:すべての便利なものは、2mを超えない。

これらの主語と述語、すなわち項に注目しましょう。4種類以上あって、三段論法になっていません。しかし、「不便なもの=便利でないもの」と言い換えることができます。他にも項を3種類になるように書き直すと、

大前提:すべての2m以上のものは、保管しにくいものだ。

小前提:すべての保管しにくいものは、便利でないものだ。

結論:すべての便利なものは、2m以上のものではない。

小項は便利なもの、大項は2m以上のもの、中項は保管しにくいものです。したがって、上記の命題はそれぞれ大前提、小前提の順に並びました。また、すべてが標準形のカテゴリー的命題です。よって、これは標準形のカテゴリー的三段論法だと言えました。

つまり、もともとの推論は三段論法的推論だったわけです。

 

このように、日常的な推論も、三段論法的推論であるかどうかを見抜けば、標準形の三段論法として扱えます。その形に直せば、小前提や大前提が明らかで、項が3つのカテゴリー的命題が並ぶので、間違えることなく分析しやすいです。

三段論法という枠組みが、推論の中でいかに重要な分析対象か、感じていただけたでしょうか。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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Copi, Cohen, MacMahon
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