どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、選言三段論法と仮言三段論法について、具体例を交えて解説します。
選言三段論法とは
そもそも三段論法とは、2つの前提(大前提、小前提)から1つの結論を導くような推論でした。
そして選言三段論法(disjunctive syllogism)とは、大前提が「PはAまたはBのいずれかである」、小前提が「Aではない」の形である三段論法のことです。
選言(disjunction)は2つに1つを選ぶ言明、すなわち「AまたはBのいずれかが成り立つ」のこと。論理和とも。「PはAまたはBである」のような命題を、選言命題(disjunctive proposition)と呼びます。
例を挙げましょう。
ある男は、東京または大阪のいずれかに住んでいる。彼は大阪に住んでいない。よって、彼は東京に住んでいる。
これは妥当な推論です。
しかし、単に「または」がつくからといって、妥当となるわけではありません。
その変わり者は、悪者か、または愚か者である。彼は悪者である。したがって、彼は愚か者ではない。
これは妥当な推論ではありません。その変わり者が、悪者であり、かつ愚か者である可能性もあるからです。
日常的な言語では、「AまたはB」という言葉は、AとBが両方真となる包含的論理和(inclusive disjunction, or)と、いずれか一方が真でいずれか一方が偽となる排他的論理和(exclusive disjunction, xor)が区別されていないことがあります。
選言三段論法が妥当となるときは、後者、排他的論理和として「または」を使っているときに限られることがわかりますね。
二者択一の状況があり、かつ一方でないならば、もう一方が導かれる。これは非常に基本的な三段論法と言えます。
仮言三段論法とは
仮言三段論法(hypothetical syllogism)とは、「もし~ならば、~である」という形の命題を使った三段論法のことです。条件的三段論法(conditional syllogism)とも。
例を挙げましょう。
もし彼が殺人事件の犯人ならば、彼は犯行現場にいた。もし彼が犯行現場にいたならば、現場に痕跡がある。したがって、もし彼が犯人ならば、現場に痕跡がある。
これは妥当な仮言三段論法です。「もし~ならば、~である」形式の命題、すなわち仮言命題(条件命題)のみを含む三段論法を、純粋な仮言三段論法(pure hypothetical syllogism)と呼びます。
別の例です。
完全な平和主義は良い主義である、もしみんながそれに従うならば。しかしみんなが従うわけではないので、良い主義ではない。
Gilbert Harman, The Nature of Morality
これは
前提:もしみんなが完全な平和主義に従うならば、それは良い主義である。
前提:みんなが完全な平和主義に従うわけではない。
結論:完全な平和主義は、良い主義ではない。
と捉えられます。このように、仮言的な前提とカテゴリー的命題の両方が合わさった三段論法を、混合仮言三段論法(mixed hypothetical syllogism)と呼びます。
ここで用いている「もしAならばBである、Bでない、よってAでない」という推論は、モーダストレンス(modus tollens)と呼ばれる妥当な推論です。(トレンスは、ラテン語で否定を意味する)
最後にもう一つ例を見てみましょう。
もし清少納言が古事記を書いたならば、清少納言は偉大な書き手だ。そして、清少納言は偉大な書き手だ。だから、清少納言は古事記を書いた。
これは混合仮言三段論法です。しかし、なんだかおかしいですね。妥当な推論ではありません。
途中が「清少納言は古事記を書いた、だから偉大な書き手だ」という議論ならば、これはモーダスポネンス(modus ponens)と呼ばれる推論で、妥当です。
しかし今回は、「もしAならばBだ、そしてBだ」と条件文の結論の方を肯定してしまっています。結論が正しいならば、前提は正しいという推論は妥当ではありません。このような間違いを、結果の肯定による錯誤(fallacy of affirming the consequent)と呼びます。
以上、選言三段論法と仮言三段論法を紹介してきました。
一般に三段論法と言えば、
- カテゴリー的三段論法(定言的三段論法)
- 選言三段論法
- 仮言三段論法
の3種に分かれます。日常的に見かける推論、三段論法を見かけたときに、それがどんな三段論法なのか、ぜひ考えてみてください。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
Introduction to Logic (English Edition)
参考文献
Copi, Cohen, McMahon “Introduction to Logic”
こちらもおすすめ
三段論法の分類:叙法(A,E,I,O)と格、形式、妥当な15種とは