収束する点列の部分列が収束することの証明

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

今回は、距離空間において、収束する点列の部分列が収束することの証明を紹介します。

 



示したいこと、前提の確認

\((X,d)\)を距離空間とし、\((x_n)_n\)を収束する点列、その極限を\(x\)としましょう。

どんな部分列\((x_{n(k)})_k\)を考えても、それは\(x\)に収束します。これを証明しましょう。

 

そのために、部分列の定義を確認しましょう。\((y_k)_k\)が\((x_n)_n\)の部分列であるとは、新たな番号付けをする関数\(n: \mathbb{N} \to \mathbb{N}\)で「\(i>j\)ならば\(n(i)> n(j)\)、かつ\(y_k = x_{n(k)}\)」を満たすものが存在することです。

文字が重複していますが、部分列のほうで用いている\(n\)は関数です。今回は部分列を\((x_{n(k)})\)と書いていますが、さらに下付きの文字にして\((x_{n_{k}})\)と書くこともあります。

 

証明

では、証明しましょう。

\(\varepsilon >0\)とします。\((x_n)_n\)が\(x\)に収束することから、「\(n \geq N\)ならば\(d(x_n,x)<\varepsilon\)」を満たす\(N \in \mathbb{N}\)が存在します。

この\(N\)に注目し、部分列について調べます。\(k \geq N\)とすると、部分列の定義から\(n(k) \geq n(N)\)です。

また、(\(N\)がどんな自然数であっても)\(n(N) \geq N\)です。これを数学的帰納法で示しましょう。\(N=1\)のとき、部分列の定義から\(n\)は\(\mathbb{N}\)への関数であることから、\(n(N) \in \mathbb{N}\)で、\(n(N) \geq 1\)です。\(N=\ell\)のとき、\(n(\ell) \geq \ell\)と仮定しましょう。すると、部分列の定義から\(\ell + 1 > \ell\)を利用すれば\(n(\ell+1) > n(\ell)\)です。\(n(\ell+1),n(\ell)\)は自然数で、\(>\)が成り立っていて、等号が成り立たないことから、\(n(\ell+1)-n(\ell) \geq 1\)です。よって、\(n(\ell+1) \geq n(\ell)+1 \geq \ell +1\)が示せました。

したがって、\(n(k) \geq N\)を満たします。「\(n \geq N\)ならば\(d(x_n,x)<\varepsilon\)」の前提を満たすので、\(d(x_{n(k)},x)<\varepsilon\)です。これにより、部分列\((x_{n(k)})\)が\(x\)に収束することが示せました。

 

逆は一般には成り立たない

点列の部分列が収束するからといって、元の点列が収束するとは限りません。

例えば、\(X= \mathbb{R}\)において、\(x_n = (-1)^n\)を考えましょう。この数列は振動し、収束しません。

\(n(k)=2k\)により定義できる部分列を考えれば、\(x_{2k}= (-1)^{2k}=1\)と常に1でありつづける数列で、\(1\)に収束します。

収束する点列があればその部分列の収束は言えるわけですが、部分列が収束したからといって元の点列の収束が言えるとは限らないわけです。

 

以上、距離空間において、収束する点列の部分列が収束することの証明を紹介してきました。

当たり前とされがちな結果ですが、どうして当たり前なのか説明できると良いですね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

 

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