どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、p乗可積分な関数とは何か、負のべき乗、L^1だがL^2でない例を紹介します。
p乗可積分な関数とは
\(1 \leq p <\infty\)として、\(\Omega\subset \mathbb{R}^N\)上定義された関数\(f:\Omega \to \mathbb{R}\)に対し、その\(L^p\)ノルムを
\[\|f\|_{L^p}:= (\int_{\Omega} |f(x)|^p dx)^\frac{1}{p}\]
とします。これが有限の値を持つ(積分が収束する)とき(\(\|f\|_{L^p}< \infty\))、\(f\)を\(p\)乗可積分と呼びます。積分が発散するとき、つまり\(\|f\|_{L^p}=\infty\)のとき、\(f\)は\(p\)乗可積分と言います。
また、\(p\)乗可積分のなす空間を
\[L^p(\Omega) := \{f \mid \|f\|_{L^p} <\infty\}\]
と表し、\(L^p\)空間と呼びます。
ノルムを\(p\)乗しても有限の値かどうかは変わらないため、
\[\|f\|_{L^p}^p= \int_{\Omega} |f(x)|^p dx < \infty\]
かどうかと言い換えても同じ条件です。
例
ここまでが定義ですが、\(p\)乗可積分な関数は、具体的にどんなものがあるでしょうか。
今回は、べき乗を活かした例として、負のべき乗形の関数を考えましょう。
\(\Omega =(0,1)\)として、\(f(x)=\frac{1}{\sqrt{x}}\)について考えます。\(p\)乗して積分した結果は、
\[\begin{aligned} &\|f\|_{L^p}^p \\ &= \int_0^1 |\frac{1}{\sqrt{x}}|^p dx \\&= \int_0^1 \frac{1}{x^{\frac{p}{2}}} dx \end{aligned}\]
です。
一般に、負のべき乗の原点付近での積分は、指数が1より小さいなら収束、大きいなら発散します。
\(0<\alpha<1\)のとき、\(\int_0 ^1 \frac{1}{x^\alpha}dx \)は収束する。
\(\alpha \geq 1\)のとき、\(\int_0 ^1 \frac{1}{x^\alpha}dx \)は発散する。
したがって、\(\frac{p}{2}\)が1より小さいかどうかによって、
\[ \|f\|_{L^p} \left\{ \begin{array}{lr} <\infty && (0<p <2) \\ =\infty && (p \geq 2) \end{array} \right. \]
となることがわかりました。
\(f(x)=\frac{1}{\sqrt{x}}\)は、\(f \in L^1\)ですが、\(f\not \in L^2\)となる例と言えます。
一般には、\(L^2 ((0,1))\subset L^1 ((0,1))\)という関係が知られています。これが真部分集合であることを示した例ですね。
積分範囲を変えると、収束の状況は逆転することに注意しましょう。\(\frac{1}{\sqrt{x}} \in L^2((1,\infty))\)ですが、\(\frac{1}{\sqrt{x}}\not \in L^1((1,\infty))\)です。無限遠方では、べき乗が強い方が減衰の効果によって収束します。
このように、\(L^1 \subset L^2\)や\(L^2 \subset L^1\)かどうかは、常に一方が成り立つものではなく、積分の範囲\(\Omega\)によって変わりうるものです。
一般化
もう少し一般化して、\(f(x)= \frac{1}{x^\beta}\)について考えましょう。
\(p\)乗すると指数が\(\beta p\)となるため、さきほどと同様の議論で、
\[ \|f\|_{L^p} \left\{ \begin{array}{lr} <\infty && (0<\beta <\frac{1}{p}) \\ =\infty && (\beta \geq \frac{1}{p}) \end{array} \right. \]
です。
\(f \in L^2\)かつ\(f\not \in L^3\)となる例を作ってみましょう。\(\beta =\frac{1}{3}\)とすれば、
\[ \|f\|_{L^2} <\infty \quad (0<\beta <\frac{1}{2}) \]
\[ \|f\|_{L^3} =\infty \quad (\beta \geq \frac{1}{3}) \]
となりますね。したがって、\(L^3 ((0,1))\subsetneqq L^2 ((0,1))\)です。
さらに一般に、\(1 \leq p <q\)として、\(L^q ((0,1))\subset L^p ((0,1))\)という関係があります。
これが真部分集合であることを示す例としては、\(\beta =\frac{1}{q}\)とすれば良いです。\(p<q\)より、\(\beta =\frac{1}{q}< \frac{1}{p}\)なので、
\[ \|f\|_{L^p} <\infty \quad (0<\beta <\frac{1}{p}) \]
\[ \|f\|_{L^q} =\infty \quad (\beta \geq \frac{1}{q}) \]
となり、\(f \in L^p\)かつ\(f \not \in L^q\)となることが示せました。
以上、p乗可積分な関数とは何か、負のべき乗、L^1だがL^2でない例を紹介してきました。
「1乗可積分だが2乗可積分でない例を挙げよ」と聞かれたとき、慣れていないとイメージするのが難しいかもしれません。負のべき乗形の関数と、その収束発散が簡単に判定できることを知っていれば、p乗可積分な関数、可積分でない関数の具体例として扱いやすいでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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