どうも、木村(@kimu3_slime)です。
大学数学における「基礎」と、中学高校の数学で聞いた「基礎問題」の「基礎」には、意味の違いがあることに気づいたので、その紹介をします。
「基礎」の違い
「基礎」と言われて、どんなイメージを持つでしょうか。
中学高校における基礎
中学や高校では、基礎は「最初に学ぶべき(basic)」「初歩的で簡単な(elementary)」という意味を持つことが多かったです。
教科書や参考書において、「基礎・基本」と「応用・発展・コラム」に内容を分けた書き方をされているのを見かけます。これは学習指導要領の範囲内か、範囲外かが影響するようです。
数研出版のテキストでは、「基本問題」「標準問題」「発展問題」「章末問題」と4つに問題が分類されています。基礎、標準、発展の順に難しくなっていく、という設定ですね。
大学数学における基礎
一方、大学数学における「基礎」は、必ずしも簡単ではありません。むしろ、難しいと感じることのほうが多いでしょう。
これは「基礎」を謳っている教材が、読者を騙そうとしているわけではありません(笑)。中学高校で用いられている「基礎」とは意味のズレがあるのです。
大学数学における基礎は、理論の基礎(foundation)を意味しています。
例えば小中高における数学では、「1+1=2」という計算や実数は当たり前のものとして話を進めますが、大学数学では自然数や実数の構成について考えることがあります。それは「1+1=2」という計算すら当たり前ではなく、原理原則(公理)から導くべき対象となり、結果は「簡単(当り前)」に見えても、示し方は簡単ではなくなります。
数学の基礎となる論理について調べる分野は、数学基礎論(foundation of mathematics)、数理論理学などと呼ばれています。手にとってみればわかりますが、簡単とは限りません。
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基礎は必ずしも「論理」の基礎だけを指す言葉ではありません。数学のさまざまな理論の論理的な基礎を意味しています。
例えば、東京大学出版の「基礎数学」シリーズは、論理にかぎらず、いろいろな分野の基礎をきちんと扱った教科書です。
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おそらく「入門」という言葉も、大学(アカデミア)と一般では受け止め方が違う言葉でしょう。
一般には、「入門」は何も知らない人が手取り足取り教えてもらえるもの、と思うのではないでしょうか。
この本で示されるような「入門」はそれとは違い、「線形代数」という広大な分野を修めるにあたり、まずは知っておくべき入門的な内容をきちんと紹介する、というものです。「入門書」は、「専門書」に比べればやさしいものですが、数学に詳しくない完全な初学者にとってやさしいとは限らないことに注意しましょう。
また、「応用」という言葉についても、大学と一般で意味のズレがあると感じます。
大学数学は、しばしば純粋数学(pure math、基礎数学)と応用数学(applied math)に分けられます。
中学高校における言葉づかいのように、基礎数学の方が簡単で、応用数学のほうが難しい、というわけではないことに注意しましょう。数学独自の問題意識があるか、数学の他学問への応用を意識しているかの違いです。
以上、数学における「基礎・入門」といった言葉について、大学とそれ以外の場でニュアンスが異なることを紹介してきました。
僕は大学で学んでと意味のズレを感じた用語なので、見かけたらどういう意味なのか注意しましょう。基礎だからといって、甘く見ることはできませんね。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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