どうも、木村(@kimu3_slime)です。
今回は、数学セミナー編集部「数学ガイダンスhyper」のレビューをします。
日本評論社 (2005-03T)
¥1,430 (中古品)
どんな本か
もし理学部数学科に進学する人や、数学科の大学数学がどんなものか知りたいとしたら、僕は最初の一冊として「数学ガイダンスhyper」を勧めるでしょう。実際、数学科への案内情報として、この本を挙げている大学もどこかにあった気がします。
数学の本の読み方、セミナーの準備の仕方、大学数学の各分野ごとの紹介、数学者によるおすすめの本など、まさに数学科のガイダンスが1冊の本としてまとまっています。
教科書ではなく、大学数学の全体像を見渡す地図のような役割をしてくれる本です。このサイトでは僕なりに大学数学のロードマップを作りましたが、その発想の一部分はこの本で得ました。
目次
- ようこそ数学へ
- hyper検断 数学を学ぶ心構え、数学の勉強法
- 新入生に薦める5冊×6人
- 数学ビギナーズガイド
- 本を読もう-自立への第一歩
- 情報検索と図書館
- セミナーの準備はここまでしておきたい!
- 大学で学ぶ数学
- 線形代数、微分積分、ロジック(論理学)、微分幾何学、トポロジー、表現論、微分幾何、数理物理、偏微分方程式、整数論、計算量理論、多様体論、関数論、複素力学系、可積分系、離散数学、確率論
- ブックガイド
- 数学系大学院案内
メリット
なんと言っても、数学科に入りたての僕にとっては「本を読もう-自立への第一歩」と「セミナーの準備はここまでしておきたい!」のコラムが、数ページと短く、意義ある部分でした。後者に近い内容は、ウェブ上でも公開されています。
数学用語や記号や意味を確認する、その論理的な展開を追う、具体例を考える、証明を要約する……。今となっては僕も当たり前にする考え方ですが、大学1年生の講義ではそんなヒントはありませんでした。正直、この本は大学1年生の最初に読みたかったし、おすすめしてほしかったです(笑)。
参考:大学数学の教科書(数学書)が難しいのはなぜ? 読み方を考える
また、「大学で学ぶ数学」では、大学数学で扱うさまざまな分野テーマについて、短くその雰囲気を伝えてくれています。研究室見学をしているような気分で、数学の中でも研究したい分野、専門的な話題を探すのにピッタリです。
デメリット
全体を通して、数学者向け、数学研究者を目指す人の数学、という感じはします。数学者たちが書いているので当然なのかもしれないですが。
例えば、微分積分の紹介では、1年生の微積分のキーワードとして
- 上界・下界、有界、上限・下限
- 極限、コーシー列、実数の完備性
- 上極限・下極限、\(\varepsilon\) – \(\delta\)論法
- 数列、級数、収束半径、ダランベールの判定法
- 微分の定義、平均値の定理、ライプニッツの公式
- 積分の定義、微積分の基本定理、部分積分お公式
- テイラーの公式、テイラー展開、オイラーの公式
- ロピタルの定理、無限小のオーダー
- 偏微分、全微分、合成関数の微分公式
- 多変数のテイラー展開、多変数関数の極大・極小
- 陰関数定理、ラグランジュの未定乗数法
- ガウスの積分定理、グリーンの定理
- 微分方程式の初等解法
が挙げられています。前半は典型的な微積分の基礎、実数論の一部分ですね。数学科に進む人が、最終的にこれらのトピックを知っておく必要はあるとは思いますが、それを論理的なトレーニングのされていない学部1年生で学ぶのはハードです。
僕としては前半の基礎的な話題に時間をかけすぎず、学部1年では多変数の話題をひとまず扱えるようになるのが大事だと考えています。数学科以外で数学を利用するとき、偏微分や重積分・線積分は早い段階で知っておきたいですし。
もちろん、数学科における数学において、何が大事で重点的に学ぶかは、教える人の専門分野や各数学科の重視しているポイント次第です。
この本は大学数学についてのひとつの視点を与えてくれますが、それをすべてだと思わないようにしましょう。あくまで数学科的な数学の雰囲気を伝えてくれる本です。
以上、「数学ガイダンスhyper」のレビューをしてきました。
数学科の数学を知りたい人にとっては、これ以上にない1冊だと思うので、これから数学科に進学したい人、大学数学を学び始めた人にぜひおすすめしたいです。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
日本評論社 (2005-03T)
¥1,430 (中古品)
数学セミナー編集部(編集)
日本評論社 (2018-03-06T00:00:01Z)
¥1,870
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