どうも、木村（@kimu3_slime）です。
今回は、Julia（SymPy）で有理関数（多項式の分数関数）を部分分数分解、通分する方法を紹介します。
準備
SymPyを使うので、持っていなければインストールしておきましょう。
1 2 | using Pkg Pkg.add("SymPy") |
準備として、以下のコードを実行しておきます。
1 | using SymPy |
部分分数分解、通分のやり方
まず、\(x\)を数式処理用の変数として用意しましょう。
1 | x=symbols("x") |
例として、
\[ \begin{aligned}\frac{1}{x \left(x + 2\right)}\end{aligned} \]
を部分分数分解します。「apart(数式)」が部分分数分解をする関数です。
1 2 | ex1 = 1/(x*(x+2)) apart(ex1) |
\[ \begin{aligned}- \frac{1}{2 \left(x + 2\right)} + \frac{1}{2 x}\end{aligned} \]
確かに、部分分数分解された結果が返ってきました。
この手順を逆にたどる、つまりいくつかの分数関数をひとつにまとめる（通分）するには、「simplify(数式)」を使えば良いです。
1 2 | -1/(2*(x+2))+1/(2*x) simplify(-1/(2*(x+2))+1/(2*x)) |
\[ \begin{aligned}- \frac{1}{2 x + 4} + \frac{1}{2 x}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{1}{x \left(x + 2\right)}\end{aligned} \]
もう少し難しい例でも、部分分数分解できます。
1 2 | ex2 = x/((x^2+1)*(x^2+4)) apart(ex2) |
\[ \begin{aligned}\frac{x}{\left(x^{2} + 1\right) \left(x^{2} + 4\right)}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}- \frac{x}{3 \left(x^{2} + 4\right)} + \frac{x}{3 \left(x^{2} + 1\right)}\end{aligned} \]
1 2 | ex3 = (x^3+3*x+1)/((x^2+1)*(x^2+4)) apart(ex3) |
\[ \begin{aligned}\frac{x^{3} + 3 x + 1}{\left(x^{2} + 1\right) \left(x^{2} + 4\right)}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{x – 1}{3 \left(x^{2} + 4\right)} + \frac{2 x + 1}{3 \left(x^{2} + 1\right)}\end{aligned} \]
1 2 | x^2/(x^5 - 5*x^3 + 4*x) apart(x^2/(x^5 - 5*x^3 + 4*x)) |
\[ \begin{aligned}\frac{x^2}{x^5-5x^3+4x}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{1}{6 \left(x + 2\right)} – \frac{1}{6 \left(x + 1\right)} \\- \frac{1}{6 \left(x – 1\right)} + \frac{1}{6 \left(x – 2\right)}\end{aligned} \]
ただし、分母（割る多項式）が有理数解を持たない（無理数解を持つ）ケースでは、うまく部分分数分解してくれませんでした。
1 | apart(1/(x^2-2)) |
\[ \begin{aligned}\frac{1}{x^{2} – 2}\end{aligned} \]
手動で分母を因数分解しておいても、結局同様の扱いをされてしまいます。
1 | apart(1/((x+sympy.sqrt(2))*(x-sympy.sqrt(2)))) |
\[ \begin{aligned}\frac{1}{x^{2} – 2}\end{aligned} \]
ただし、逆の操作（通分）はできます。手動で部分分数分解しておいた式を与えて、それを単純化すると、きちんと元に戻ります。
1 2 | -1/(2*sympy.sqrt(2)*(x+sympy.sqrt(2)))+1/(2*sympy.sqrt(2)*(x-sympy.sqrt(2))) simplify(-1/(2*sympy.sqrt(2)*(x+sympy.sqrt(2)))+1/(2*sympy.sqrt(2)*(x-sympy.sqrt(2)))) |
\[ \begin{aligned}- \frac{\sqrt{2}}{4 \left(x + \sqrt{2}\right)} + \frac{\sqrt{2}}{4 \left(x – \sqrt{2}\right)}\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\frac{1}{x^{2} – 2}\end{aligned} \]
また、文字を含む一般的な有理関数に対し、部分分数分解できないか試しましたが、できませんでした。
1 2 3 | a,b,c,p,q,r=symbols("a b c p q r") ex5 = (x+1)/((x-a)*(x-1)) apart(ex5) |
\[ \begin{aligned}\frac{x + 1}{\left(- a + x\right) \left(x – 1\right)}\end{aligned} \]
\(x\)以外に含む変数は\(a\)ひとつですが、結果はエラーを返します。
ほしい結果があるならば、\(a\)を具体的な値に置き換えて試すと良いでしょう。「数式.subs(変数,値)」で代入しましょう。\(a=0,1,2\)のケースの有理関数、その部分分数分解を表示できます。
1 2 | [ex5.subs(a,0) ,ex5.subs(a,1),ex5.subs(a,2)] [apart(ex5.subs(a,0)),apart(ex5.subs(a,1)),apart(ex5.subs(a,2)) ] |
\[ \begin{aligned}\left[ \begin{array}{r}\frac{x + 1}{x \left(x – 1\right)}\\\frac{x + 1}{\left(x – 1\right)^{2}}\\\frac{x + 1}{\left(x – 2\right) \left(x – 1\right)}\end{array} \right]\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}\left[ \begin{array}{r}\frac{2}{x – 1} – \frac{1}{x}\\\frac{1}{x – 1} + \frac{2}{\left(x – 1\right)^{2}}\\- \frac{2}{x – 1} + \frac{3}{x – 2}\end{array} \right]\end{aligned} \]
以上、Julia（SymPy）で有理関数（多項式の分数関数）を部分分数分解、通分する方法を紹介してきました。
うまくいかないケースもありますが、多くの場合できちんと部分分数分解を計算してくれます。手計算だと計算ミスもしやすいので、検算用として使うのも良いでしょう。
木村すらいむ（@kimu3_slime）でした。ではでは。
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