どうも、木村(@kimu3_slime)です。
算数や数学を学ぶメリットとして、数字を使ったトリックに騙されにくくなる、という話を耳にします。
今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「数字のウソを見破る」を紹介します。
どんな本か
「数字のウソを見破る」は、世の中にあふれる数字の読み方、疑わしいデータへの疑問を投げかける本です。
中学以降の数学的知識は不要で、小学校で学ぶ割合・パーセントの計算がわかっていれば良いとしています。
僕が読んでみてなるほど、と思ったのは、医師国家試験の大学別合格率ランキングの話。低い方でも、70~80%あってそれほど悪くないじゃないか、と思うわけですが……。
引用:数字のウソを見破る
国家試験の受験資格は、基本的には医学部の卒業生だけが受けられる試験。つまり、もし見込みのない学生がいたら、大学側が留年を学生にそそのかすことで、合格率を挙げることができてしまいます。まあ、これは推測の域を出ませんが。
2009年からは医学部ごとの出願者数が明らかになるようになり、留年者数と出願者数の合計で分母を取れば、より実態に即した合格率が見られるようになっていました。
実際の事件としては、国民年金の分野で似た方法がありました。本人からの申請がないのに、保険料の免除手続きを社会保険事務所が行った問題。社会保険庁が年金保険料の納付率を2%上昇させるという目標を設定した翌年に起こった事件でした。保険料納付者を増やすための方法が見つからず、納付対象者そのものを減らしてしまうというハックです。
合格率や納付率といった、数値の割合を目標にすると、望ましくないやり方で数値だけ改善しようとしてしまうものなのかもしれません……。商売文句としても割合はよく見かけますが、注意したいですね。
目次
- 第1章 医療と健康の数字
- メタボリックシンドロームの判定基準はおかしい
- コレステロールの正常値に根拠はない
- 日本人は無駄ながん検診ばかり受けている
- 脳ドックは脳外科医のためのもの!?
- 治療効果を誇張するトリック
- 「食品成分表」はどこまで信頼できるか
- 医師国家試験合格率のウソ
- 失政が起こした医師不足と看護師不足
- 病院で生まれて病院で死ぬ時代
- 第2章 社会と経済の数字
- 天気予報は本当に当たっているのか?
- 意味のないテレビの視聴率競争
- 製造年月日が消費期限・賞味期限に変わった理由
- 民営化で郵便局のお客様が減った?
- 「最近、暑くなっているように思う」のは地球温暖化ではない
- 値下がりした株を買い増してしまう罠
- 求人率・求人倍率は実態を反映していない
- 女性の終了率は戦前の方が高かった
- 少子化対策に必要なのは「子ども手当」よりも保育の充実
- 婚外子が少子化問題を解決する
- 平均寿命は重要でない
気になる点
この本には、数字のトリック部分だけでない著者の見解が書かれています。つまり、推測の域を出ない判断が見られます。著者の一人は医学博士、ひとりは科学評論家ですが、この本は専門書ではありません。専門領域に関する話題は、当然ですがこの本だけを信じるのも良くないでしょう。
また、ウソと疑う思考は、陰謀論につながるかもしれません。本書が提示しているのは、数字を疑おうくらいのものです。タイトルはキャッチーさのために「ウソ」と言っていますが、ウソとまで言い切るならちゃんと根拠が示せる話題に絞ったほうが良さそうです。
できれば、疑う方法だけではなく、正しく考える方法、根拠に基づく医療・エビデンスベースドや、統計・論理の話もあったらと思いました。類書として、「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」は、世界の最近の統計データを提示し、人間の誤りのパターンを提示しようとした本で面白かったです。
「数字のウソを見破る」はKindleの読み放題サービスKindle Unlimitedに登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。人間の扱う数字には、妥当でないものが混ざっているかも……と考えるきっかけになるでしょう。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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