どうも、木村(@kimu3_slime)です。
数学において論理は大事ですが、論理について学べる一般向けの本は多くありません。
今回は、読み放題サービスKindle Unlimitedの対象となっている「3時間で頭が論理的になる本」を紹介します。
どんな本か
「3時間で頭が論理的になる本」は、論理的な考えかに関する話が短く読める本です。前提知識はいらず、中学生でも社会人でも読めます。
著者はかつて予備校で現代文を教えていて、その経験から論理を大切にしようと考えたといいます。論理的な読み方、書き方の話がされていて、日本語・国語を題材としていますが、数学に取り組むにあたっても大事な能力でしょう。
文章だけでなく、間にちょこちょこまとめイラストがあって、読むのが手軽です。
引用:3時間で頭が論理的になる本 No.155
目次
- 「論理的な考え方」を身につけよう
- 「論理的な読み方」を身につけよう
- 「論理的な話し方」を身につけよう
- 「論理的な書き方」を身につけよう
- 「論理的な頭」を身につけよう
気になる点
「論理」について
本書は『カリスマ 講師が教える仕事で成功 する思考 法 [ 図解] < 出口式 > 論理力 ノート』を改題したもので、現代文の参考書、それをビジネス書に変換したものと思って読むと違和感はないです。しかし、論理に関する記述には少なくない疑問を覚えました。
つまり、著者の経験から出る話は面白いのですが、論理に関してどういう勉強をしたのかわかりません。本文中に引用されるのも現代文に登場するような文章のみで、論理に関する参考文献はありません。
本書においては、論理は「筋道を立てて話すこと」と、されているように見えます。推論、定義、仮定といった論理学では当然扱うであろう概念が、ほとんど(全く?)登場しません。例えばそれは野矢「入門!論理学」には当然登場するものです。アリストテレスの名前を出せとまでは言いませんが、三段論法くらい論理の話として紹介した方が良いんじゃないでしょうか。
本書では「曖昧な言葉を使わないようにしよう」という提案をしていて、それ自体は論理の考え方として良いと思います。ただそのための実践として、「抽象語を身につけよう」と言うと、下手すると逆効果です。身につけるべき抽象語の具体例として、論証や定義といった言葉について解説しても良いのではないでしょうか。
僕の論理に対する理解が、著者のものと前提が大きく異なっているせいかもしれませんが、論理的な正しさや、明快さに対する言及は少ないように見えました。それこそが論理の力、感性の異なる相手とコミュニケーションを取る力を支えていると僕は考えています。
個別で言えば、帰納と演繹に関する記述も曖昧でした。これは推論という枠組みを示さないことが原因でしょう。こうした推論自体を駆使することは、論理の活用として良いことだと思います。
参考:「演繹的・帰納的」な推論の定義、違いを、具体例を交えて解説
また、「論理的な話し方」の項では、ディベートの話が述べられています。意見を要約したり、前提を疑ったりするのは面白い話です。しかし大勢を納得させる話し方についても書かれていますが、これは弁論術の域です。論理がなくとも相手を納得した気にさせるテクニックは、疑似論理として、論理と注意して区別した方が良いと思います。
文字偏重の思想
論理とは関係ない部分で言えば、文字偏重の思想が見られるのが気になってしまいました。
「今の若い世代は議論を嫌います」と言い、子どものときから音楽、アニメ、ゲーム、ケータイなどに浸っていると指摘。それと議論が嫌いなことに論理的な根拠はありません。
「頭を鍛える読書をしよう」では、映像文化=映画・テレビを受動的行為、文字文化=小説を創造的行為と表現します。小説において、文字から情景を想像する力を使うのはそうです。しかし、映像を見てそれを言葉で説明しようと考えたら、それもまた想像力ではないでしょうか。バラエティを受動的な感動の例としてあげていますが、それは映像だからではなく内容の問題で、バラエティ的な文章であっても同じことではないでしょうか。
小説を読んでほしい、時代や国を超える経験をしてほしいという思いはわかりますが、そのために他の媒体を下げる必要はないのではないでしょうか。「論理」の世界が、「文字=文学作品・日本語の評論」にしばられているように見えて、悲しく思いました。
僕は「3時間で頭が論理的になる本」を、Kindleの読み放題サービスKindle Unlimitedで読みました。登録してあれば無料なので、ぜひ試しに読んでみてください。論理に関する批判はしましたが、それ以外の部分は面白い本だと思います。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。
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