どうも、木村(@kimu3_slime)です。
微積分学で学ぶテイラー展開の展開式の覚え方、導き方、証明を紹介します。
テイラー展開とは
\(f:[a,x]\to\mathbb{R}\)を\(n+1\)回微分可能な関数とします。このとき、
\[ \begin{aligned}f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+ \cdots + \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n + R_{n+1}(x)\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}R_{n+1}(x)=\frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x-a)^{n+1}\end{aligned} \]
を満たす\(c\in (a,x)\)が存在します。
これをテイラーの定理、\(R\)を剰余項と呼びます。
テイラー展開の展開式の覚え方、導き方
学びはじめのときは、この展開式の形が複雑に見え、覚えにくいかもしれません。そこで、簡単な導き方を紹介します。
係数を導く
そもそもテイラー展開とは、複雑で一般には値が求めにくい関数\(f(x)\)を、多項式\((x-a)^n\)の和によって近似することを意味しています。
参考:なぜテイラー展開を学ぶ? 単振り子を例にわかりやすく解説
というわけで、係数は覚えずとも、展開式をまず書いてみることはできますよね。
\[ \begin{aligned}f(x)=C_0 + C_1 (x-a)+C_2(x-a)^2+R(x)\end{aligned} \]
簡単のため、2次までの展開式とします。
\(R\)は未知の関数で、3次以降の多項式のため、\(R(a)=R'(a)=R”(a)=0\)となると仮定します。
すると、\(f(a),f'(a),f”(a)\)を計算すれば
\[ \begin{aligned}f(a)=C_0\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}f'(a)=C_1\end{aligned} \]
\[ \begin{aligned}f”(a)=2C_2\end{aligned} \]
となります。
3次以降の項があるとすれば、\(f^{(3)}=2\cdot3 C_3\)となり、\(f^{(n)}=n! C_n\)となることがわかるでしょう。階乗の係数が出てくるのは、多項式を\(n\)回微分するときにその積を計算するからです。
剰余項を導く
もとの展開式に戻せば、
\[ \begin{aligned}f(x)=f(a) + f'(a) (x-a)+\frac{f”(a)}{2}(x-a)^2+R(x)\end{aligned} \]
です。\(R\)は未知の関数でしたが、逆にこれによって\(R\)を定義してしまいましょう。
\[ \begin{aligned}R(x)=f(x)-\{f(a) + f'(a) (x-a)+\frac{f”(a)}{2}(x-a)^2\}\end{aligned} \]
一見複雑な関数ですが、
\[ \begin{aligned}R(x)=\frac{f^{(3)}(c)}{3!}(x-a)^{3}\end{aligned} \]
となる\(c\)が存在することが、コーシーの平均値の定理によって示せます。
コーシーの平均値の定理
\(f,g\)を微分可能な関数、\(g(x)\neq g(a)\)、\(f’,g’\)が同時には0にならないとする。
このとき、
\[ \begin{aligned}\frac{f(x)-f(a)}{g(x)-g(a)}=\frac{f'(c)}{g'(c)}\end{aligned} \]
となる\(c\in(a,x)\)が存在する。
この定理において、\(f\)を\(R\)に、\(g\)を\((x-a)^3\)と置いてみましょう。繰り返し適用すれば、
\[\begin{aligned} \frac{R(x)}{g(x)} &= \frac{R(x)-R(a)}{g(x)-g(a)} \\ &= \frac{R'(c_1)}{g'(c_1)}\\ &= \frac{R'(c_1)-R'(a)}{g'(c_1)-g'(a)}\\ &= \frac{R”(c_2)}{g”(c_2)}\\ &= \frac{R^{(3)}(c_3)}{g^{(3)}(c_3)}\\ &= \frac{R^{(3)}(c_3)}{3!} \end{aligned}\]
となる\(c_3<c_2<c_1\)が存在します。そして\(R\)を3回微分した項になれば、多項式の部分が消えて\(R^{(3)}(c_3)=f^{(3)}(c_3)\)となるので、
\[ \begin{aligned}R(x)=\frac{f^{(3)}(c_3)}{3!}g(x)=\frac{f^{(3)}(c)}{3!}(x-a)^{3}\end{aligned} \]
が示せました。今回は3次までの展開で考えていますが、\(n\)次の場合も同様に示せますね。
テイラーの定理は平均値の定理の応用
テイラー展開のアイデアは、高校数学の範囲内、(ラグランジュの)平均値の定理によるものです。
(ラグランジュの)平均値の定理
\(f\)を微分可能な関数とする。
このとき、
\[ \begin{aligned}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}=f'(c)\end{aligned} \]
となる\(c\in(a,x)\)が存在する。
この式を
\[\begin{aligned} f(x) &= f(a)+f'(c)(x-a) \\ &= f(a)+f'(a)(x-a)+\{f'(c)-f'(a)\}(x-a) \end{aligned}\]
\[ \begin{aligned}R_1(x)=\{f'(c)-f'(a)\}(x-a)\end{aligned} \]
と書き換えれば、これはテイラーの一次展開ですね。
コーシーの平均値の定理を使って、差\(\{f'(c)-f'(a)\}\)をシンプルな高階の微分によって表現すれば、求める展開式が得られます。
テイラー展開の覚え方…ということで文章を書きましたが、よく理解すれば、あんまり覚える必要がありません。
係数は多項式に展開されたと仮定すれば導けますし、剰余項も平均値の定理を知っていれば簡単です。ぜひ、何も見なくてもテイラー展開を活用できるようになってみてください。
木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。