運動量保存の法則を微積分で導出・証明する

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

高校の物理学では、運動量保存の法則を習うと思います。

運動している2つの物体\(A,B\)が衝突したとき、質量を\(m_A,m_B\)、衝突前の速度を\(v_A(t_1),v_B(t_1)\)、衝突後の速度を\(v_A(t_2),v_B(t_2)\)とすると、

\[ \begin{aligned}m_A v_A(t_1)+m_B v_B(t_1) = m_A v_A(t_2)+m_B v_B(t_2)\end{aligned} \]

この運動量保存の法則は、微積分を使って、ニュートンの運動法則(運動方程式)と作用・反作用の法則から導くことができます。今回はそれを紹介します。

前提知識:高校レベルの微積分。「運動」をイメージすればわかる、微分と積分入門

 

 



力学的エネルギー保存の法則を微積分で証明する

言葉の確認

まず、言葉の確認をしましょう。

物体の質量を\(m\)、時刻\(t\)における物体の位置を\(x(t)\)、すなわち時間の関数として表すことにします。このとき、速度と加速度、運動量

\[ \begin{aligned}v(t)= \frac{dx}{dt}(t),\quad a(t)= \frac{dv}{dt}(t)= \frac{d^2x}{dt^2}(t),p(t)=mv(t)\end{aligned} \]

と定義されるのでした。また、物体に加わる力を\(F(x,v,t)\)として、運動方程式は

\[ \begin{aligned}m a(t) = F(x,v,t)\end{aligned} \]

です。

 

1物体の運動量保存則

上で紹介した運動量保存則は、2体間の運動量保存則です。それを導くために、まず1つの物体でも運動量保存の法則が成立することを示しましょう。

運動量\(p=mv\)を使って運動方程式を書き換えると

\[ \begin{aligned} \frac{dp}{dt}(t) = F(x,v,t)\end{aligned} \]

です。両辺を、\(t\)について\(t_1\)から\(t_2\)まで積分すると、

\[ \begin{aligned}p(t_2)- p(t_1)= \int _{t_1}^{t_2 } \frac{dp}{dt}(t) =\int_{t_1}^{t_2}  F(x,v,t) dt\end{aligned} \]

です。右辺は力積と呼ばれます。

ここで、外力が何も働かない、すなわち\(t_1 <t <t_2\)において\(F=0\)ならば、

\[ \begin{aligned}p(t_1)=p(t_2)\end{aligned} \]

で、運動量は保存されます。

 

2物体の運動量保存則

運動している2つの物体\(A,B\)が衝突したときを考えるので、衝突以外の力、外力は働いていないものとします。

そして、衝突によって\(A\)が\(B\)から受ける力を\(F_{AB}\)、\(B\)が\(A\)から受ける力を\(F_{BA}\)としましょう。

作用・反作用の法則により、\(F_{AB}=- F_{BA}\)です。

また、2物体の運動方程式は、\(p_A,p_B\)を使うと

\[ \begin{aligned}\frac{dp_A}{dt}=F_{AB},\frac{dp_B}{dt}=F_{BA}\end{aligned} \]

で、2本の式を足し合わせることによって

\[ \begin{aligned}\frac{dp_A}{dt}+\frac{dp_B}{dt}=0\end{aligned} \]

よって、両辺を\(t\)について\(t_1\)から\(t_2\)まで積分すると、

\[ \begin{aligned}p_A(t_1)+p_B(t_1) = p_A(t_2)+p_B(t_2)\end{aligned} \]

と、運動量保存の法則が証明できました。

 

運動方程式は、物体に力が働かない\(F=0\)のとき、運動量が保存されていることを述べています。

微積分のアイデアを使えば、それは簡単に示すことができますね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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