サイン、コサインは何の役に立つ? バネの振動と三角関数

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

高校の数学で教えられる、サイン、コサイン、タンジェント……何の役に立つのか、疑問に思う方も多いのかもしれません。

参考:「サイン、コサインを女の子に教えて何になる?」鹿児島県知事の発言を乙武洋匡氏が批判「時代錯誤」【UPDATE】 – HUFFPOST

今回は、バネの振動のような周期的な動きを説明するときに、三角関数が役に立つことを紹介します。ビジュアルがイメージできれば怖くない。

 



バネの運動と「フックの法則」

おもりをバネにつなぎ、ひっぱって離すような運動を考えます。(簡単のため、床はなめらかで摩擦がないものとします)

バネが伸びてない時点での位置を基準Oとし、おもりを位置\(x_0\)まで伸ばしたとします。手を離したときの運動\(x(t)\)はどうなるでしょうか。

17世紀の物理学者ロバート・フックは、バネの運動を調べ、次のような法則を打ち出しました(フックの法則)。

\[ \begin{aligned}F=- k x\end{aligned} \]

\(F\)はおもりにかかる力で、\(k>0\)はばね定数と呼ばれるバネの固さを示す定数です。

フックの法則は、おもりが引き戻される力は、おもりが伸ばされた長さに比例すると言っています。バネを伸ばせば伸ばすほど、強く引き戻される感覚があるのは、経験したことがあるでしょう。

ものの運動を説明するニュートンの運動方程式は、物体の質量を\(m\)として、次のようにあらわされます。(式の意味はわからなくても大丈夫です)

\[ \begin{aligned}m\frac{d^2 x}{dt^2}=F\end{aligned} \]

バネの運動では

\[ \begin{aligned}m\frac{d^2 x}{dt^2}=-kx\end{aligned} \]

となるわけです。これを解けば、バネの運動がわかります。

積分法を使うと(途中計算は省略)

\[ \begin{aligned}x(t)=x_0 \cos (\omega t) +  v_0 \frac{1}{\omega}\sin( \omega t)\end{aligned} \]

ここで\(v_0\)は初速度、\(\omega := \sqrt \frac{k}{m} \)としました。\(\omega\)は角振動数と呼ばれます。

静かに手を話した\(v_0=0\)のときの運動\(x(t)=x_0 \cos (\omega t)\)を図示してみましょう。(数値は正確ではありません)

\(x(0)=x_0\)からはじまり、\(x(\frac{\pi}{2 \omega})=0\)で中心に、\(x(\frac{\pi}{\omega})=- x_0\)とちょうど伸ばしたのと同じ長さまで逆に進み、再び\(x(\frac{3\pi}{2 \omega})=0\)で中心を通り、\(x(\frac{2 \pi}{ \omega})=x_0\)で戻ってくる。これの繰り返し、という動きです。

このように、バネの運動にはサイン、コサインのような三角関数が出てきます。

波形としては波を描きますが、それは円を対応させると理解しやすいです。

半径\(x_0\)の円を、赤い点が左回りに動いているようすを想像しましょう。動き方は、点と軸がなす角度\(\omega t\)によって決まっています。(角速度\(\omega\)で点が円運動しているとも言う)

図のような直角三角形においてコサインの定義は、斜辺分の底辺。つまり、赤い点を軸に射影した高さが、そのまま\(x(t)=x_0 \cos (\omega t)\)に対応しています。だから、左の円運動の図と、右側のコサインの図が一致しているわけです。

このようなシンプルなバネの運動を、単振動(simple harmonic motion)と言います。

Simple Harmonic Motion: Crash Course Physics #16」という動画は、これをよく説明してくれています。

 

 

サインやコサインなどの三角関数は、バネの運動のような、周期的な運動によく登場します。三角関数は、円関数とも呼ばれます。三角という言葉にまどわされないように。

三角関数には、

\(\sin t=\sin(t+2n \pi) , \cos t = \cos(t+2n \pi) \)

という周期性があります。また、二回微分すると符号を変えて元に戻ってくる

\(\frac {d^2}{dt^2} \sin t= -\sin t , \frac {d^2}{dt^2}\cos t =  -\cos t \)

という特殊な性質もあります(ふつう、微分を繰り返すと関数の形は変わっていってしまう)。2回微分しても形が大きく変わらない関数……それを意識していれば、バネの運動方程式

\[ \begin{aligned}m\frac{d^2 x}{dt^2}=-kx\end{aligned} \]

の解が三角関数であることは見抜きやすいでしょう。

バネの運動や振動を説明するときに、三角関数は役に立つことが、伝わりましたでしょうか。振動や波を見たときに、サイン・コサインのことを思い出してみてください。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

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