生き物の模様は数式で決まる? チューリング・パターンとは

どうも、木村(@kimu3_slime)です。

「大学の数学ではどんなことをやっているのですか」

そう聞かれると、僕はよく生き物の体の模様の話をします。

キリンやチーター、魚の縞模様・まだら模様は、じつは数式によって説明できるんです。

 

チューリング・パターンとは

例えば、次の画像をご覧ください。上が実際の生き物の模様、下が数式によるシミュレーションで描かれた模様です。とてもよく似ていますよね。

画像引用:生き物のからだの模様をつくりだす仕組みにズーム・イン! – 生命科学DOKIDOKI研究室

この模様は、数式を考え出した人物の名前にちなんで、チューリング・パターン(Turing Pattern)と呼ばれています。アラン・チューリングは、計算機の父としても有名です。

チューリングは1952年に、The Chemical Basis of Morphogenesis(形態形成の化学的基礎)という論文で、生き物のパターンが作られる仕組みの理論を提示しました。

近藤茂先生は、1995年にタテジマキンチャクダイの体の模様がチューリング・パターンに沿うことを実験で確認し、科学雑誌Natureで取り上げられました。

YouTubeで「Turing Pattern」もしくは「reaction diffusion」と検索してみてください。模様ができあがっていくシミュレーションが見られて楽しいですよ。

 

反応拡散方程式とは

チューリング・パターンがベースとしている数式は、反応拡散方程式(reaction diffusion equations)と呼ばれます。

 

生き物の体の色が、細胞の中にある二種類の化学物質U、Vからできているとしましょう。黄色と青色、白と黒でもなんでも良いです。

2成分の反応拡散方程式系は次のように表されます。

\[\frac {\partial u}{\partial t} = D_u \Delta u + f(u,v) \]

\[\frac {\partial v}{\partial t} = D_v \Delta v + g(u,v) \]

簡単に言えば、「時間変化=拡散+反応」というのが反応拡散方程式の前提とするメカニズムです。化学物質は、濃いところから薄いところへ拡散し、また化学反応により増減します、というだけのことです。

\( \frac {\partial u}{\partial t}\)、\( \frac {\partial v}{\partial t}\)は時間項と呼ばれ、化学物質の濃度の時間変化率を示しています。

\( \Delta u\)、\( \Delta v\)は拡散項と呼ばれ、濃度が均一となるように広がる仕組みを示しています。係数の\( D_u \)、\( D_v \)は拡散係数と呼ばれ、拡散のスピードを表します。

\( f(u,v)\)、\( g(u,v)\)は反応項。化学物質が環境によって生成されたり、反応によって減少したりするようすを説明します。

(反応拡散方程式については、別のページでも詳しく述べる予定。)

 

もし反応項がなければ(\( f(u,v), g(u,v)\equiv 0\))、起こる現象は拡散のみでシンプルです。

コップの水の中に黒いインクを落とすと、時間が経てば自然とグレーの一様な状態になり、どこか一部分が濃くなることはありませんよね。模様はどこにもできません。

これが水とインクではなく、相互に影響を与える化学物質だとしたら(何らかの反応項を仮定したら)どうなるか。

UがVの生成を促し、VがUの生成を抑制し、拡散スピードがVの方が大きい(\(D_v > D_u \))なら、チューリング・パターンのような一様でない模様ができあがることが示されました。

簡単に言えば、二種類の化学物質の相互作用、そのバランスの違いによって生き物の模様のようなものができあがることがわかったんですね。

チューリング波(反応拡散波)を理解したい」というウェブページでは、反応拡散方程式のプログラムが公開されています。

最初はランダムに散りばめられた二種類の化学物質が、やがてパターンを作っていくようすが目に見てわかります。

画像引用:Reaction Diffusion Example

おわりに

生き物の模様のでき方には、数学的なメカニズムも関わっています。

数学の小話をするときに、チューリング・パターンというキーワードを覚えておくと使えます(笑)。スマホで検索して、ビジュアルとして楽しめるので良いですね。

木村すらいむ(@kimu3_slime)でした。ではでは。

 

反応拡散方程式
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